事あるごとに「論理的におかしい」と仰るオマエラですが,「論理」がどれだけの深みを持ち合わせているのかをちゃんと確認していきましょう.
§1: Stone双対性
命題論理(propositional logic)とは量化記号を含まない論理式について考えたもので,インフォーマルに言えば最も基礎的な論理構造について抑えたものだと言えるだろう.この記事では,命題論理それ自体を,ある位相空間(topological space)として数理モデル的に考察するものである.察しの良い読者にはお分かりかと思われるが,数理論理学においては構文論(syntax)と意味論(semantics)を分けて考えるのが主流であるが,これから議論する内容は専ら意味論に属すものである.
まず,本議論において重要となる空間について定義する.
ここで,命題論理における論理式とは,原子命題と論理演算子を用いて帰納的に構成される有限記号列である.すなわち,一つの論理式中には有限個の原子命題のみが現れ,付値関数により,それぞれを0か1かに対応させるのである.
数学的に議論するため,原子命題は可算無限個の記号集合の元であるとしよう.付値関数をと定めると,付値関数全体の集合*1は,から,明らかにとの間に全単射が存在する.従って,命題論理に0,1を対応させることは,カントール集合(カントール空間の台集合)の元を考えることに等しい.
ここで,カントール空間のClopen集合(開かつ閉集合)は,特定の座標にのみ値の条件を課して,その他の座標は自由な値を取るようにした点の集合である.これは,「論理式中に出現する原子命題のみに特定の値を割り振った集合」と考えることが出来る.論理式同士を論理演算で結び,新しい論理式を構成するのが帰納的な構成であったが,これは集合論的に表現できないのだろうか?それに答えるのが,Stone双対性と呼ばれる考えである.この記事では,簡潔にその内容に触れていくこととしよう.
(続きは,また更新します.)
*1:これは正しく集合となります.